2026年3月17日、国土交通省は2026年1月1日時点の公示地価を公表しました。全国全用途平均は前年比+2.8%と5年連続の上昇となり、バブル崩壊後で最大の伸び率を更新しました。
一方で、これまで三大都市圏を上回る上昇率が続いていた地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)は伸び率が鈍化し、14年ぶりに三大都市圏を下回る結果となりました。2026年は、東京・大阪の都心部がこれまで以上に地価上昇を牽引する構図が鮮明になった年と言えます。
本記事では、公示地価の結果を整理しつつ、当サイト「家賃データベース」で追っている家賃動向との関係を投資家目線で解説します。
1.全国の地価動向:全用途+2.8%で上昇幅が拡大
1-1.全用途平均の推移
まずは全国・三大都市圏・地方圏の全用途平均の推移です。
| 区分 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全国 | ▲0.5 | 0.6 | 1.6 | 2.3 | 2.7 | 2.8 |
| 三大都市圏 | ▲0.7 | 0.7 | 2.1 | 3.5 | 4.3 | 4.6 |
| 東京圏 | ▲0.5 | 0.8 | 2.4 | 4.0 | 5.2 | 5.7 |
| 大阪圏 | ▲0.7 | 0.2 | 1.2 | 2.4 | 3.3 | 3.8 |
| 名古屋圏 | ▲1.1 | 1.2 | 2.6 | 3.3 | 2.8 | 2.3 |
| 地方圏 | ▲0.3 | 0.5 | 1.2 | 1.3 | 1.3 | 1.2 |
| 地方四市 | 2.9 | 5.8 | 8.5 | 7.7 | 5.8 | 4.5 |
| その他地方 | ▲0.6 | ▲0.1 | 0.4 | 0.7 | 0.8 | 0.8 |
(単位:%、出典:国土交通省「令和8年地価公示結果の概要」)
全用途平均と商業地は上昇幅が拡大し、住宅地は前年と同水準の上昇を維持しています。三大都市圏では東京圏・大阪圏が引き続き上昇幅を拡大させた一方、名古屋圏は住宅地・商業地ともに上昇幅が縮小しました。
地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)も住宅地・商業地ともに上昇幅が縮小し、地方四市の全用途平均上昇率が14年ぶりに三大都市圏を下回るという転換点を迎えています。
1-2.住宅地・商業地の動向
住宅地の全国平均は+2.1%と、前年と同水準の上昇を維持しました。一方、商業地は全国平均で+4.3%、三大都市圏では+7.8%と、商業地のほうがより強い上昇となっています。
背景には、インバウンド需要の回復や、都心部での再開発・オフィス需要の回復などがあり、特に東京圏の商業地は+9.3%と突出した伸びを示しています。
一方で地方では、建築コストの著しい高騰を背景に、再開発計画の見直しや延期が多発しており、これが地価の伸び率を鈍化させていると考えられます。札幌市ではJR札幌駅周辺の再開発の遅れや北海道新幹線延伸の延期、福岡市ではJR博多駅前の「空中都市」構想の中止など、象徴的な事例が続いています。
2.上昇率上位エリア:リゾート地と東京都心が二極化
2-1.住宅地:リゾート地と都心部が上位に
住宅地の変動率上位ランキングを見ると、2025年に続き、インバウンド需要が旺盛なリゾート地が上位を占めています。
- 1位:長野県白馬村(+33.0%)
- 2位:北海道富良野市(+30.0%)
- 3位:長野県野沢温泉村(+22.3%)
これらのエリアでは、
- インバウンド観光客向けの宿泊需要
- 移住者による別荘・コンドミニアム需要
- 観光業従事者向けの従業員住宅需要
が重なり、近年高い上昇率が続いています。
一方で、ランキング上位には港区・文京区・品川区など東京都心エリアも目立ちます。マンション需要が非常に強いエリアであり、建設コスト高騰や用地不足による新規供給の絞り込みの中で、実需・投資マネーが集中し、地価を押し上げています。
2-2.商業地:千歳市がトップ、東京・大阪の繁華街も高騰
商業地の変動率上位ランキングでは、北海道千歳市が1位となりました。
- 1位:千歳市千代田町(+44.1%)
- 2位:千歳市錦町(+38.5%)
大手半導体メーカー「ラピダス」が2025年4月に試作ラインの稼働を開始し、2027年の量産化を見据えた関連投資が進んでいることが、地価を大きく押し上げています。
東京では、
- 渋谷区桜丘町(渋谷サクラステージ開業)
- 台東区浅草周辺(インバウンド需要)
など、再開発・観光需要が重なるエリアで20%前後の高い上昇率が見られます。
3.首都圏の地価動向:東京が突出、千葉・埼玉も堅調
3-1.東京都:住宅地+6.5%で全国1位
東京都全域の変動率は以下の通りです。
| 区分 | 全用途 | 住宅地 | 商業地 |
|---|---|---|---|
| 東京都全域 | 8.4(7.3) | 6.5(5.7) | 12.2(10.4) |
| 23区 | 11.1(9.6) | 9.0(7.9) | 13.8(11.8) |
| 多摩地区 | 4.3(3.8) | 3.9(3.4) | 6.0(5.3) |
(単位:%、かっこ内は2025年、出典:東京都財務局「令和8年地価公示価格(東京都分)の概要」)
東京都全体の全用途平均は+8.4%と伸び率が拡大し、住宅地は+6.5%と18年ぶりに全国都道府県別で1位となりました。変動率上位ランキングにも東京都心部の地点が多数ランクインしており、都心部の強さが際立ちます。
背景には、
- 都心部における旺盛なマンション実需
- 投資マネーの集中(国内・海外)
- 建設コスト高騰・用地不足による新規供給の制約
があり、希少性の高い物件に需要が集中することで、地価が押し上げられています。
3-2.神奈川県:横浜・川崎・相模原が牽引
| 区分 | 全用途 | 住宅地 | 商業地 |
|---|---|---|---|
| 神奈川県全域 | 4.4(4.1) | 3.4(3.4) | 7.3(6.6) |
| 横浜市 | 4.6(4.3) | 3.3(3.2) | 8.2(7.2) |
| 川崎市 | 5.6(5.4) | 4.4(4.4) | 9.0(8.5) |
| 相模原市 | 5.1(4.8) | 4.5(4.3) | 7.0(6.6) |
(単位:%、出典:神奈川県「地価公示の概要(令和8年地価公示)」)
神奈川県全域の住宅地の上昇率は+3.4%と前年と同率。横浜市では関内駅・横浜駅周辺の商業地で高い伸びが継続し、川崎市も商業地+9.0%と高水準を維持しています。
相模原市は、橋本駅周辺でのリニア中央新幹線開業への期待感から、住宅地の上昇率が+4.5%と政令指定都市3市の中で最も上昇幅が拡大しました。
3-3.千葉県:流山市がトップ、東京圏との格差も鮮明
| 区分 | 全用途 | 住宅地 | 商業地 |
|---|---|---|---|
| 千葉県全域 | 5.0(5.0) | 4.6(4.5) | 5.8(5.7) |
| 東京圏(県内) | – | 4.9(4.9) | 7.0(7.0) |
| 地方圏(県内) | – | 0.1(▲0.2) | 0.1(▲0.2) |
(単位:%、出典:千葉県「令和8年地価公示に基づく地価動向について《千葉県》」)
千葉県全域の住宅地の上昇率は+4.6%と、首都圏近郊3県の中で最も高い水準を維持しています。住宅地・商業地ともに上昇率トップは流山市で、つくばエクスプレス沿線(流山おおたかの森駅・流山セントラルパーク駅)周辺の開発が注目されています。
都心部の不動産価格高騰を背景に、千葉市・松戸市など「まだ手が届く」エリアへの需要シフトも続いており、千葉県全体の上昇幅拡大に寄与しています。一方で、県内地方圏との格差も浮き彫りになっています。
3-4.埼玉県:県南エリアと県北・県西の二極化
| 区分 | 全用途 | 住宅地 | 商業地 |
|---|---|---|---|
| 埼玉県全域 | 2.3(2.1) | 2.0(2.0) | 3.2(2.8) |
| さいたま市 | 3.4(3.1) | 2.7(2.5) | 5.4(4.8) |
| 川口市 | 5.2(5.3) | 4.5(5.1) | 9.1(6.6) |
| 蕨市 | 6.3(6.1) | 5.9(6.1) | 9.0(6.1) |
| 戸田市 | 6.3(6.4) | 6.1(6.2) | 8.3(7.5) |
(単位:%、出典:埼玉県「令和8年地価公示のあらまし」)
埼玉県全域の住宅地の上昇率は+2.0%と前年と同率で、商業地は+3.2%と上昇幅が拡大しましたが、首都圏近郊3県の中では最も低い水準です。
住宅地の上昇率トップは戸田市、次いで蕨市・川口市と、いずれも東京隣接の県南エリアが上位を占めています。さいたま市は大宮区・浦和区など再開発が進むエリアを中心に、住宅地・商業地ともに安定した上昇が続いています。
一方で、県北・県西部では下落が続く地点も多く、県南と県北の二極化が鮮明になっています。
4.その他主要都市:地方主要都市の急上昇は一巡
| エリア | 住宅地平均変動率 |
|---|---|
| 大阪府全域 | 2.8(2.3) |
| 大阪市 | 6.5(5.8) |
| 愛知県全域 | 1.8(2.3) |
| 名古屋市 | 3.1(3.6) |
| 北海道全域 | 0.6(1.4) |
| 札幌市 | 1.1(2.9) |
| 宮城県全域 | 2.8(4.2) |
| 仙台市 | 4.3(6.3) |
| 福岡県全域 | 3.7(4.9) |
| 福岡市 | 7.0(9.0) |
(単位:%、出典:国土交通省「令和8年地価公示の概要」)
東京都を除く主要都市のうち、住宅地の上昇幅が前年から拡大したのは大阪市のみで、名古屋市・札幌市・仙台市・福岡市といった各都市はそろって伸び率を落としています。コロナ禍以降続いてきた地方主要都市の急上昇局面が一巡しつつある様子がうかがえます。
こうした流れの中で際立つのが、東京と大阪の強さです。東京都の住宅地変動率は+6.5%と18年ぶりに全国1位となり、大阪市も+6.5%と上昇幅を拡大させています。地方都市に分散していた投資・居住需要が、インフラ・雇用・インバウンドの集積する二大都市圏へ再び集中し始めていることが、地価の動向にも鮮明に表れています。
5.家賃データベース視点:地価上昇と家賃上昇の関係
当サイト「家賃データベース」では、すでに2026年3月、4月時点の家賃動向(東京23区など)を公開しています。
・2026年4月 | 東京23区ワンルーム家賃は23カ月連続最高値 | 首都圏・全国主要都市の賃貸家賃動向
・2026年3月|東京23区ワンルーム家賃が22カ月連続最高値【首都圏比較】
今回の公示地価と照らし合わせると、次のような整合性が確認できます。
- 東京23区:家賃は前年比で緩やかな上昇傾向 → 地価(住宅地+9.0%)も強い上昇で整合的
- 千葉・埼玉:家賃上昇は東京より緩やか → 地価も「堅調だが東京ほどではない」水準
- 地方四市:家賃上昇の勢いが鈍化 → 地価も同様に伸び率が鈍化
投資家目線で見ると、
- 東京23区・大阪市:地価・家賃ともに上昇が続いており、今後も賃料改定余地が見込めるエリア
- 千葉・埼玉の県南:東京の価格高騰を受けた「受け皿」として、家賃・地価ともに中長期的な底堅さが期待できる
- 地方主要都市:急上昇局面は一巡し、今後はエリア・物件の選別がより重要
- リゾート地・半導体関連エリア:ボラティリティが高く、出口戦略を前提とした投資が前提
特に、家賃データベース(2026年版)で示した東京23区の家賃上昇は、今回の公示地価の結果(住宅地・商業地の強い上昇)と整合的であり、「家賃の強さ=地価の強さ」を裏付けるデータと言えます。
6.まとめ:2026年は「二大都市圏回帰」が鮮明になった年
2026年公示地価は、
- 全国全用途平均+2.8%で5年連続の上昇
- 東京・大阪の都心部が地価上昇を牽引
- 地方四市の全用途平均上昇率が14年ぶりに三大都市圏を下回る
という結果となり、都市圏と地方の二極化が一段と鮮明になった年でした。
家賃データベースの視点からは、
- 東京23区・大阪市:家賃・地価ともに上昇が続く「コアエリア」
- 千葉・埼玉・神奈川の一部:都心高騰の受け皿として中長期的に有望
- 地方主要都市:上昇局面が一巡し、今後は個別エリアの見極めが重要
利上げの進行と人口減少が続く中、エリアによる地価・家賃の明暗は今後さらに広がっていく可能性があります。投資判断においては、「家賃の実勢」と「地価のトレンド」をセットで見ることが、これまで以上に重要になってきています。
