はじめに:繰上返済では改善しない“構造的赤字”に直面
私は現在、返済原資として100万円を保有しており、この資金を使って保有物件の中で最も返済利回り(※)の高い「三鷹台(京王井の頭線三鷹台駅徒歩10分、返済利回り=6.84%)」の繰上返済を検討していました。
※返済利回り = 年間返済額 ÷ 残債
しかし、改めて収支を精査したところ、この物件は年間CFが▲32万円のと大きな赤字を抱えており、100万円を繰上返済しても、改善幅は+6.84万円/年に留まります。赤字は解消されません。
さらに、
- 修繕積立金の大幅増額リスク
- 金利上昇リスク(住宅ローンの返済額の変化をシミュレーションで確認)
- 家賃改善のタイムラグ
といった要素も重なり、今後のCFはむしろ悪化する可能性が高い状況です。
そこで私は、「繰上返済による改善」だけでなく、”売却と保有のどちらが資産形成に有利か”という視点で比較することにしました。
物件情報
| 項目 | 内容 |
| 物件情報 | 武蔵野市 井の頭線三鷹台駅徒歩10分 |
| 戸数 | 27戸 |
| 家賃 | 80,500円(2026年2月に+3,000円) |
| 周辺家賃相場 | 前年比+10.86%(上昇トレンド) |
| ローン(2024年7月に借換) | ・担保 :1,530万円(2.35%/30年) ・無担保: 610万円(2.525%/20年) |
| 管理費/修繕積立金 | 6,890円/1,210円 |
| 年間CF | ▲32万円 |
| 年間元本返済 | 約60万円 |
| 返済利回り | 6.84% |
| 想定売却価格 | 2,300万円 (売却損 −126万円) ※売却益シミュレータで試算 |
この物件は2030年にデッドクロスを迎える
三鷹台の物件は、2030年にデッドクロス(税務上の転換点)を迎える予定です。
デッドクロスとは、減価償却の効果が薄くなり、税金負担が増えてキャッシュフローが悪化するタイミングのことです。2030年にデッドクロスを迎えるため、デッドクロス前の売却は合理的な選択肢と言えます。
参考記事:デッドクロスとは?仕組み・発生理由・対策をシミュレーションで徹底解説
売却と保有を比較するためのフレームワーク
今回は以下の4軸で評価します。
- 年間CFの改善幅
保有:繰上返済で+6.84万円/年
売却:赤字が消える→+32万円/年 - 残債の減少スピード
保有:年間60万円の元本返済
売却:売却までの元本返済額が利益に - 将来の支出増加リスク
修繕積立金の増額、金利上昇に伴う返済額の増額 - 手元資金100万円の使い方
繰上返済に使うか、温存しておくか
修繕積立金・金利・家賃の「現実シナリオ」
今回の分析では、すべての前提を現実的かつ保守的なシナリオで算出しました。
- 金利:1年目:+0.3%、2年目:+0.5%、3年目以降横ばい
- 管理費:年1%上昇
- 修繕積立金:5年目に+5,000円、6年目以降:毎年+500円
※現在1,210円と極端に低く、国交省データから見ても今後の大幅増額はほぼ確実 - 家賃:+1%/年
- 売却価格:−1%/年
売却 vs 保有:メリット・デメリット比較表
| 施策 | メリット | デメリット |
| 売却 | ・年間CF改善:+32万円/年 ・繰上返済原資100万円温存 ・修繕積立金増加リスク回避 ・金利上昇リスク回避 ・融資余力が向上 | ・売却損:−126万円(確定) ※売却益シミュレータで試算 |
| 保有 | ・60万円/年の元本返済 ・家賃は中長期で上昇余地 | ・年間CF▲32万円の継続 ・修繕積立金の大幅増額 ・金利上昇リスク ・2030年にデッドクロス |
売却タイミング別の総収支
| 売却タイミング | 手残り | 保有期間の CF累計 | 売却後の 改善CF | 10年後 総収支 |
| 1年目売却 | +188万円 | −32万円 | +288万円 (32万円x9年) | +444万円 |
| 5年目売却 | +340万円 | −160万円 | +160万円 (32万円x5年) | +340万円 |
| 10年目売却 | +537万円 | −380万円 | 0 | +217万円 |
結論:早期にCFを最大化するなら「1年目売却」がベスト
今回の分析で明確になったのは、
- 年間CF▲32万円の赤字を即ゼロ化
- 売却資金を再投資することで、CFが更に改善
- 将来リスクを回避
- 修繕積立金の増額回避
- 金利上昇に伴う返済額増額を回避
- 2030年のデッドクロスを回避
という点です。つまり、“CFの再投資による資産形成速度を最大化する”という目的では、1年目売却が圧倒的に有利です。
私の判断:まずは「2,500万円」で売りに出す
今回の検証を経て、私は想定価格(2,300万円)より高めの2,500万円で売りに出すことにしました。
- 売れれば損失を最小化して撤退できる
- 売れなければ価格を少しずつ下げる
- 保有期間は残債を減らし続ければよい
今回の検証が、同じように悩む投資家の皆さんの判断材料になれば幸いです。
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