インフレ基調が続くなか、首都圏の賃貸市場においても家賃水準の上昇が続いています。
私が所有する東京23区および三鷹市の区分マンション(計11件)における2024年12月〜2026年8月の賃料改定データを分析したところ、すべての物件で家賃が上昇(平均+5.3%)しました。
特に、学芸大学(目黒区)では約1年間で2回の新規募集を経て計+10,000円(+9.1%)アップ、中野区でも相場+5,000〜7,000円上乗せした「強気設定」で即入居決定(+10.1%アップ)となるなど、需要の強いエリアでの上昇圧力は相場以上です。
この記事では、実際の運用データをもとに「なぜ都内でも家賃上昇に明確な濃淡(エリア格差)が生まれつつあるのか」、そして「今後の募集で取るべき攻めの賃料戦略」を解像度高く解説します。
所有11物件の家賃改定実績(2024年12月〜2026年8月最新版)
| 改定時期 | エリア 最寄駅 | 駅徒歩 | 築年数 | 改定前 | 改定後 | 変動額 変動率 | 種別 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 24年12月 | 大田区 大森 | 17分 | 20年 | 74,000 | 75,000 | +1,000 1.3% | 更新 |
| 25年1月 | 豊島区 椎名町 | 1分 | 36年 | 55,000 | 56,000 | +1,000 1.8% | 更新 |
| 25年5月 | 大田区 大森 | 17分 | 20年 | 75,000 | 77,000 | +2,000 2.7% | 新規 |
| 25年5月 | 練馬区 上石神井 | 9分 | 14年 | 74,000 | 77,000 | +3,000 +4.1% | 新規 |
| 25年7月 | 目黒区 学芸大学 | 8分 | 14年 | 110,000 | 115,000 | +5,000 +4.5% | 新規 |
| 25年11月 | 板橋区 常盤台 | 2分 | 17年 | 75,000 | 79,000 | +4,000 +4.1% | 更新 |
| 26年1月 | 練馬区 石神井公園 | 13分 | 19年 | 74,000 | 77,000 | +3,000 +4.1% | 更新 |
| 26年2月 | 武蔵野市 | 10分 | 10年 | 77,500 | 80,500 | +3,000 +3.9% | 更新 |
| 26年3月 | 目黒区 大岡山 | 8分 | 25年 | 90,000 | 95,000 | +5,000 +5.6% | 更新 |
| 26年3月 | 板橋区 成増 | 9分 | 2年 | 95,000 | 99,000 | +4,000 +4.2% | 更新 |
| 26年7月 | 中野区 中野富士見町 | 4分 | 22年 | 129,000 | 142.000 | +13,000 +10.1% | 新規 |
| 26年8月 | 目黒区 学芸大学 | 8分 | 14年 | 115,000 | 120,000 | +5,000 +4.3% | 新規 |
| 計 | ー | ー | ー | 833,500 | 878,500 | +44,000 +4.7% | ー |
※※学芸大学の物件は2025年7月(新規)と2026年8月(新規)の2段階改定。当初(11.0万円)対比で+10,000円(+9.1%)の上昇。
都内賃貸市場における「家賃上昇の濃淡」を分析
一連のデータを分析すると、現在の都内賃貸市場には「物価高・人件費高に伴う底上げ圧力(年1.5〜4%)」と「特定エリアにおける需要集中による上昇(年8〜10%超)」という2階建ての構造が存在していることが分かります。
①【ベースライン】インフレ圧力による「市場全域の底上げ」
- 上昇率の目安: +1.5% 〜 +4% 前後
- 該当物件: 大森(駅17分)、石神井公園(駅13分)、椎名町、成増、常盤台など
駅徒歩10分を超える物件や築20〜30年超の物件であっても、更新・新規問わず値上げがスムーズに通っています。
これは新築マンション価格・家賃の高騰に伴って中古賃貸へ需要が流れ込んでおり、「物価が上がる以上、家賃が上がるのも自然である」という入居者側のセンチメントが都内全域に定着したことを示しています。
②【好立地】「相場+α」でも即決定!人気エリアの攻めの値付け
- 上昇率の目安: +8% 〜 +10% 超
- 該当物件: 中野区(駅4分)、学芸大学(東横線・駅8分)
今回特に大きな学びとなったのが、中野区(駅徒歩4分)の事例です。新規募集にあたり、単に既存相場に合わせるのではなく「今後のさらなる家賃上昇トレンドを見越し、周辺相場よりもさらに+5,000〜7,000円高い強気設定(142,000円)」で募集を行ったところ、見事に入居者を獲得することができました。
上昇局面的において「平均相場に合わせて募集する」というのは一見確実で無難な選択に見えますが、実は潜在的な収益チャンスを逃すリスクもあります。
人気エリアでこの「攻めの設定」が成功した背景には、以下の要素があります。
先高感(インフレ予測)を入居者・管理会社双方が認識
- 「今決めないと、更に相場が上がる」という認識から、相場より高めでも条件が良ければ決まる。
好立地物件の需要の強さ
- 中野や東横線沿線(学芸大学)などは「この街に住みたい」というパワーシングル・高所得層が一定数存在するため、数千円〜1万円の上乗せに対する価格感度が良い意味で鈍い。
退去(新規募集)という絶好の価格改定チャンス
- 既存入居者との更新(+3〜5%程度が着地点になりがち)と異なり、新規募集は一気に市場価格+将来の上昇分を織り込めるチャンス。これまで空室は恐怖だったが、インフレ局面では家賃の大場上昇のチャンス。
③【構造的課題】サブリース契約はインフレの波に乗れない
上昇率: 0%(据え置き)
市場全体で家賃が着実に上昇し、攻めの設定で収益を伸ばせる局面である一方、サブリース契約中の物件については保証賃料の引き上げに応じてもらえませんでした。
インフレ局面においてサブリースは、「市場の伸び・上昇益(アップサイド)を一切享受できない」という構造的なデメリットが明確に露呈する結果となっています。
「コスト増」に対するキャッシュフロー防衛としての家賃改善
家賃が平均+5.3%上昇したことは好材料ですが、同時に不動産オーナーを直撃する各種コストも上昇を続けています。
- 住宅ローンの金利上昇(変動金利の上昇による返済額の増加)
- 管理費・修繕積立金の値上げ(人件費や資材高騰による見直し)
- 原状回復費・設備交換費用の高騰(エアコンや給湯器等の設備本体・施工費の上昇)
単に「収益力を高める」目的だけでなく、「迫りくる固定費・変動費のコスト増からキャッシュフローを守る防衛策」として、強気の家賃改定は今後も必須の運用アプローチとなります。
まとめ:次回以降の「攻めと守り」の家賃改定戦略
今回の11物件・12回の改定データから得られた今後の運用方針は以下の通りです。
- 全物件ベースラインで+3〜5%の値上げを維持する(守りの改定)
- エリアや駅徒歩に関わらず、インフレ基調を背景とした定期更新時の値上げ打診を定例化する。
- 人気エリアの新規募集は「相場+α」の強気設定で臨む(攻めの改定)
- 中野や学芸大学のような強エリアでは、周辺の平均相場に満足せず、将来の上昇トレンドを見越して+5,000〜10,000円上乗せした強気のチャレンジ価格で募集を開始する。
- サブリース契約の解消・直管理(自主管理)化の推進
- インフレ局面で賃料相場が上がっている時期だからこそ、サブリースの解約や移管を検討し、収益機会の損失を防ぐ。
参考記事:
家賃改善のインパクト|収益還元法でわかる価値上昇と投資効率の向上
家賃改善で物件価値はどれだけ上がる?収益還元法から計算 | 家賃改善シミュレーター
家賃データベース
2026年6月 | 家賃動向レポート
2026年5月|家賃動向レポート
2026年4月|家賃動向レポート
2026年3月|家賃動向レポート
2025年12月|マンション家賃、単身者向け最高

