はじめに
危うく、自分自身が「二度損」をするところでした。
私はこれまで、新築ワンルームを高値で購入し、赤字に苦しみ、最後は安値で売却してしまう「二度損」の危険性について発信してきました。しかし今回、三鷹台のワンルームの売却を検討する中で、その構造に自分自身が入りかけていたことに気付きました。
管理費・修繕積立金の大幅増額、想定を下回る査定価格、そして改めて見えてきた地域の需要。実際に売却活動を進めたことで、シミュレーションだけでは分からなかった現実が見えてきました。
関連記事:三鷹台ワンルームは売却か保有か|赤字32万円・2030年デッドクロス前の最適解を検証
想定通りではなく、想定以上だった管理費・修繕積立金の増額
前回の記事では、修繕積立金が月額1,210円という水準は低すぎるため、将来的な大幅増額は避けられないだろうと書きました。しかし実際に管理組合総会で提案された内容は、予想を上回るものでした。
- 管理費:6,890円 → 9,040円(+2,150円/月)
- 修繕積立金:1,210円 → 9,480円(+8,270円/月)
合計すると、毎月10,420円の負担増、年間では約12万5,000円の支出増となります。区分マンション投資では決して無視できる金額ではありません。
この通知を見た時、「いよいよ本格的に出口戦略を考えるべきかもしれない」と思いました。
売却査定はもっと厳しかった
そこで実際に売却査定を取得しました。前回の記事では売却価格を2,300万円前後で試算していました。しかし現実は想像以上に厳しいものでした。
- 一般仲介での想定成約価格:約1,780万円
- 管理会社の買取提示額:1,680万円
残債は約2,000万円残っています。
つまり売却した場合、残債との差額に加え、仲介手数料や諸費用も自己資金で負担する必要があります。管理費や修繕積立金の増額は、毎月の収支を悪化させるだけではありません。
出口価格そのものを押し下げる。
今回の査定結果を見て、その影響の大きさを改めて実感しました。
そのとき気付いた。「二度損」になりかけている
査定結果を見ながら、以前自分で書いた記事の内容を思い出しました。私が警鐘を鳴らしてきた「二度損」とは、次のような流れです。
- 新築を高値で購入する(最初の損)
- 赤字で苦しむ
- 不安になって売却する
- 安値で売却する(二度目の損)
そして安く買い取った業者が再販で利益を得ます。私はずっと、この不動産業者が無知な素人投資家から搾取する構造から抜け出さなければならないと考えてきました。
ところが今回の三鷹台は、まさに自分自身がその入り口に立っていたのです。
1,680万円で売るべきなのか?
もちろん、業者買取そのものを否定するつもりはありません。業者は再販リスクを負いますし、利益も必要です。市場価格より買取価格が低くなるのは当然です。しかし私が考えたのは、
本当に今、この価格で手放すべきなのだろうか?
ということでした。確かに、
- 管理費は上がる
- 修繕積立金も上がる
- キャッシュフローは赤字
です。だから売却を検討しました。しかし一方で、
- 家賃は上昇している
- 空室は発生していない
- 賃貸需要は維持されている
という事実もあります。もし不安だけを理由に1,680万円で売却していたら、購入時の損失に加え、出口でも大きな損失を確定させることになります。それはまさに、自分自身が警告していた「二度損」でした。
改めて現地を歩いてみた
そこで数字だけで判断することを一旦やめました。実際に現地を見てみよう。そう思い、久しぶりに三鷹台を訪れました。
駅から物件まで実際に歩いてみると、所要時間は約10分30秒。広告上の徒歩10分表記は概ね正確でした。確かに駅近とは言えません。
しかし現地を歩いていると、私の見方は少し変わりました。
教育施設と医療施設が集積しているエリアだった
現地で最も印象に残ったのは、教育施設や医療施設の多さです。
- 大学付属中学・高校
- 大学関連施設
- 市立中学校
- 各種医療施設
私はこれまで、単純に「三鷹台駅徒歩10分のワンルーム」としてこの物件を見ていました。しかし実際には、教育・医療関連需要に支えられた住宅エリアという側面も持っていました。
地図や募集資料だけでは分からない発見でした。
売却価格と賃貸需要は別の話だった
今回改めて感じたのは、売却価格と賃貸需要は必ずしも一致しないということです。管理費や修繕積立金の増額によって投資家の利回りは悪化します。その結果、投資家向けの売却価格は下がります。
これは事実です。しかし、そこに住みたい人の需要まで同時に失われるわけではありません。
実際、この物件は2026年2月に家賃を3,000円引き上げることができました。現地を見た印象でも、賃貸需要そのものは依然として堅調だと感じます。売却市場での評価と賃貸市場での評価は、必ずしも同じではないのです。
売却活動から見えた管理会社の本音
今回、買取価格を提示してきた管理会社は、この物件を購入した時の販売会社でもあります。同社から提示された買取価格は1,680万円でした。しかし複数社から査定を取得すると、他社の査定額の方が高いことが分かりました。
そこで私は、
他社への売却も含めて検討しています。
と伝えました。
すると意外な反応が返ってきました。担当者によると、最近は他社への売却によって管理委託契約が終了するケースが増えており、どうしても他社売却は避けたいとのことでした。
長年だめだった交渉が動いた
私はこれまで、沼袋物件のサブリース賃料増額を何度も交渉してきました。しかし回答はいつも同じでした。
難しいですね。
そこで私はこう返しました。
管理契約を維持したいのであれば、沼袋のサブリース賃料の見直しを検討してほしい。
都内の家賃相場は上昇しています。その恩恵を管理会社だけが享受し、オーナーには還元されないのは不合理だと考えたからです。
すると後日、次の提案がありました。
- 59,500円→62,000円
月額2,500円アップです。年間では3万円の増収になります。
管理費増額分は吸収できた
今回の増収額は月額2,500円です。一方で、三鷹台の管理費増額額は月額2,150円です。つまり、沼袋のサブリース賃料改定だけで、三鷹台の管理費増額分をほぼ吸収できました。
もちろん修繕積立金増額分まではカバーできません。
それでも、ある物件で発生したマイナスを別の物件の改善で補うというポートフォリオ運営ができたことは大きな収穫でした。
さらに、この交渉によって将来の売却が制限されることもありません。投資家としての自由度を維持したまま、収益改善だけを獲得することができました。
相見積には想像以上の価値があった
今回の件で得られた最大の収穫は、年間3万円の増収ではありません。本当の収穫は、
相見積もりを取ることで交渉カードが手に入る。
という事実を確認できたことです。私はこれまでサブリース賃料の増額交渉を何度も行ってきました。しかし状況は変わりませんでした。
ところが今回、実際に複数社へ査定を依頼し、他社への売却可能性が現実味を帯びたことで、管理会社の対応は大きく変わりました。
不動産投資では、
- 売却するつもりがなくても査定を取る
- 管理会社以外の意見も聞く
- 他社の条件を確認する
こと自体に大きな意味があります。
管理会社や販売会社との付き合いが長くなると、知らないうちに「その会社しか選択肢がない」ような感覚になりがちです。
しかし実際には選択肢があります。
今回の経験を通じて、相見積は価格比較のためだけではなく、交渉力を持つためにも重要だと改めて感じました。
現時点の結論
前回の記事では、
CF最大化を重視するなら早期売却が有利
という結論でした。数字だけ見れば、そのロジックは今でも理解できます。
しかし実際に市場へ出してみると、
- 管理費・修繕積立金の増額が確定した
- 売却価格は想定を大きく下回った
- 地域需要は思ったより強かった
- 管理会社との交渉余地も見つかった
- 収益改善も実現できた
という新しい事実が見えてきました。そして何より、私は自分自身が「二度損」の構造に入りかけていたことに気付きました。だからといって永久に保有するつもりはありません。投資家ですから、条件が整えば売却します。
ただ少なくとも現時点では、
「不安を理由に安値で売るより、収益改善を続けながら保有する方が合理的」
というのが私の結論です。不動産投資はExcelのシミュレーションだけでは判断できません。現地を歩いて初めて分かることがある。売却活動をして初めて見える市場価格がある。そして相見積を取って初めて見える交渉力もある。
今回の三鷹台は、そのことを改めて教えてくれた物件でした。
