はじめに:繰上返済原資を“そのまま使わない”という選択肢
不動産投資において、返済比率(年間返済額 ÷ 年収)は融資の可否を左右する最重要指標です。 返済比率が悪化すると、どれだけキャッシュフローが出ていても次の融資に進めません。
その返済比率を改善する有力な手段が「繰上返済」です。
参考記事:繰上返済の投資効率については、こちらの記事で整理しています。
👉 繰上返済の投資効率を考える
参考記事:株式投資との相乗効果については、以下で解説しています。
👉 返済利回りを爆上げ:株式投資との相乗効果
本記事はこれら2つを統合し、「繰上返済原資そのものを運用して増やしてから繰上返済する」 という戦略を解説します。
戦略の全体像:繰上返済原資を運用→繰上返済というスキーム
この戦略は以下の流れで進みます。
- 繰上返済に使う予定の原資(例:100万円)を確保
- すぐに返済せず、株式で運用
- 原資が増えたタイミングで「返済原資+運用益」を繰上返済(返済額軽減型)
- 運用益により繰上返済後の返済額が大きく減り、キャッシュフローが改善
- 自己資金利回り(CF ÷ 自己資金累積投入額)が上昇
- 投資サイクルが加速
利回りは高い方が良いが、初期利回りが低くても“戦略で改善できる”
不動産投資では、購入直後の利回り(= CF ÷ 自己資金)は高い方が望ましいです。 頭金を多く入れれば返済額が減り、初期CFは改善します。
しかし、初期利回りが低い、あるいは マイナスCFでスタートするケースでも改善が可能です。なぜなら、不動産投資の利回りは「購入時点で固定されるものではない」からです。
不動産投資の最終利回りは、
最終利回り=最終的なプラスCF ÷ 累積自己資金投入額
で決まります。ここで重要なのは、
累積投入額 = 頭金 + 繰上返済原資(あなたが実際に財布から出した金額)であり、株式運用で増えた繰上返済額は累積投入額に含めないという点です。
例えば、
- 原資:100万円
- 株式運用で +10% → 110万円繰上返済
この場合の自己資金投入額は 100万円のまま。 増えた10万円は “自己資金利回りを押し上げるレバレッジ効果” として働きます。
自己資金投入は“完済まで”続ける必要はない
不動産投資の安定運用ラインは 返済比率60%以下。ここを下回れば、空室、設備故障、管理費・修繕積立金の増額、金利上昇といった想定外の支出があってもプラス収支で運用ができます。
つまり、返済比率60%以下になった時点で、追加の自己資金投入は不要。そこから先は物件が自走し、CFが自然に積み上がっていくフェーズに入ります。
返済利回り(年間返済額 ÷ 残債)は時間と共に上昇
元利均等返済では、時間が経つほど元本返済が進み、残債が減ります。 そのため、返済利回りは時間の経過と共に自然に上昇します。
参考記事:返済利回りの詳細は、以下で解説しています。
👉 繰上返済の投資効率を考える
繰上返済の後ろ倒しはデメリットだが、戦略として十分許容可能
繰上返済を後ろ倒しにすると、
- CF改善が遅れる
- スノーボール効果(CFの複利成長)が後ろ倒しになる
というデメリットがあります。
しかし、後ろ倒しにはメリットも存在します。時間が経つほど元本返済が進み、残債が減るため、 返済利回り(年間返済額 ÷ 残債)が自然に上昇します。
その結果、
- 同じ繰上返済額でも後ろ倒しの方がCF改善効果が大きくなる
- 株式運用がマイナスでも、待つ間に返済利回りが上がるため“損ではない”
- 後ろ倒しは繰上返済効率を高める時間投資として機能する
つまり、「後ろ倒し=CF改善が遅れる」というデメリットはあるが、 「返済利回りが上がり、自己資金利回りが向上する」というメリットがあるため、株式投資の利益確定まで時間が掛かったとしても戦略として十分に許容できるのです。
インフレ時代では“原資運用”が必要となる理由
2020年代以降、物件価格は大きく上昇しました。以前は1,000万円で購入できた物件も、現在は1,200万円~1,500万円に上昇しています。
その結果、同じ100万円の繰上返済でも、残債に占める割合が小さくなり、返済利回りが低下するという構造的な問題が生まれています。
だからこそ、原資を運用して増やしてから繰上返済することが、現代の不動産投資ではより重要になります。
繰上返済は“確定利回り”、株式は“未確定+課税後利回り”
繰上返済は「税金のかからない確定利回り投資」です。一方で、株式投資はリターンが変動し、利確時には税金が発生します。 この違いを理解することが、両者をどう組み合わせるかの鍵になります。
繰上返済の利回りは確定利回り
- 税金がかからない
- 元本保証に近い
- 返済額が確実に減る
→ 返済利回りが6.84%の場合、“税引き後6.84%”の確定利回りです。 これは「リスクゼロで6.84%のリターンを得る投資」と同義です。
株式投資の利回りは”未確定+税引き後で減る
- 株価変動によりリターンが不確定
- 利確時に20.315%の税金
- 税引き後利回りは必ず低くなる
たとえば、株式で税引き後6.84%のリターンを得るには、 税引き前で 8.58% の利回りが必要になります。
6.84% ÷ (1 – 0.20315)=8.58%(税引き前)
つまり、繰上返済の6.84%確定利回りは、株式投資の税引き前8.58%に相当するということです。
両者の関係をどう活かすか
- 株式投資は「原資を増やすための運用」
- 繰上返済は「増えた原資を確定利回りに変換する装置」
この2つを組み合わせることで、 不確定な株式リターンを確定利回りに転換する戦略が成立します。
関連記事:株式投資との相乗効果については、こちらの記事で実例付きで詳しく解説しています。
👉 返済利回りを爆上げ:株式投資との相乗効果
